【上昇気流】米中技術の優位性の逆転


東洋哲学の中心であった「易学」には陰陽説と五行説がある。四季が巡るのも陰陽の比率が変わるためであり、その変化に本質があった。一方、西洋のギリシャ哲学では根元物質は何かという問い掛けが強い。

デモクリトスは原子の存在を主張し、アリストテレスは四元素説に至った。「西欧は根元物質を求めつづけたのであって、それが固体とか凝縮体などの『物』になる」(伊達宗行著『新しい物性物理』講談社)。

そのため、今日でも欧米の物理学は固体物理学が主流で、気体のように凝縮されていないものの研究はやや不得手だと言われる。

中国の極超音速ミサイル「東風17」=2019年10月、北京(EPA時事

中国はこの夏、極超音速ミサイルの発射実験を行って思惑通りの結果を得たという。極超音速とはマッハ5以上、つまり音速の5倍以上の速さで、飛翔体の周囲の空気はプラズマ化し、電波を反射するほどだ。

米軍高官は「米軍が過去5年程度で極超音速兵器の実験を9回行ったのに対し、中国の実験回数は数百回に上る」と明かしている(小紙7日付)。実験には、人工的に風を作り、その中で試行する極超音速風洞装置が必要だが、米国にはこうした施設が不足し技術開発が遅れているとみられる。

これまで米国の軍事力の背景には、常に他国の技術に対する圧倒的な優位性があった。しかし極超音速兵器に関しては、それが逆転し中国が先頭を走っている可能性が高い。先に指摘した欧米の物理学の現状を裏付けるような事態で、誠に憂慮される。