【上昇気流】大谷選手 国民栄誉賞を辞退


上昇気流

大谷翔平選手

 米大リーグのア・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれたエンゼルスの大谷翔平選手が、政府から国民栄誉賞の授賞を打診され辞退した。打診に対する大谷選手の回答は「まだ早いので今回は辞退させていただきたい」。それはそうだろう。

 大谷選手の投打「二刀流」の大活躍は、成績として素晴らしいだけでなく、長引く新型コロナウイルス禍の中で希望と勇気を与えてくれた。政府が国民栄誉賞を贈りたくなる気持ちは分かる。しかしこの賞は、大記録を残した選手が現役晩年か引退後に贈られるという印象が強い。

 大谷選手は27歳。選手としては、いよいよこれからというところだ。本人も「選手としてピークを迎えるここから5~7年は、勝負の年だと思うのでもっと頑張りたい」と語っている。

 2001年、大リーグ移籍1年目で首位打者とア・リーグMVPを獲得したイチロー選手も「まだ28歳で発展途上。野球人生を終えた段階でいただけるよう頑張りたい」と国民栄誉賞を辞退した。大谷選手もそれと近い気持ちだろう。

 受賞がモチベーションの低下や重荷になる恐れもある。辞退は十分予想されたが、その上で政府として祝意を表したということか。

 松野博一官房長官は「さらなる高みに向けて精進に集中するという強い気持ちと受け止めている」と述べた。まずは来シーズンの本塁打王と投手としての2桁勝利を期待するファンの多くも、受賞辞退を肯定的に捉えているだろう。