【上昇気流】落語家の3代目三遊亭圓歌


岩倉

 落語家の3代目三遊亭圓歌は岩倉鉄道学校に在籍中、学徒動員で山手線新大久保駅の駅員を務めた。後に「山のあな、あな」のフレーズで日本中を笑わせた創作落語「授業中(山のあなた)」に新大久保駅が出てくる。歌奴を名乗っていた昭和の時代のことだ。

 4代目柳亭痴楽には「恋の山手線」があり、当時の28の駅名を七五調でリズムよく綴(つづ)った。歌手の小林旭さんがこれを拝借して同名の曲を歌ったが、なぜか新大久保が出てこない。

 小田急電鉄が来春から子供料金を一律50円にするというので嬉(うれ)しくなって、つい昭和の落語を思い出した。プロ野球も鉄道会社と縁が深い。ヤクルトの前身は国鉄。オリックスは阪急と近鉄。ソフトバンクは南海。西武は西鉄。阪神は差し詰め「昔の名前で出ています」といったところか。

 鉄道は信仰とも関わった。近鉄は大阪から「生駒の聖天さん」(宝山寺)に参拝客を運ぶため、日本初のケーブルカーを山頂まで設け、京成は東京から不動明王信仰の「成田山」(新勝寺)を結んだ。また、阪急のように「宝塚歌劇団」を創って人々を呼び込んだ鉄道会社もある。

 今年8月の小田急線での刺傷事件後、それを模倣する凶悪犯罪が続き、鉄道の信頼が揺らいでいる。安全を確保し、来春には子供たちを喜ばせてほしい。。

 「小田急線の窓に 今年もさくらが映る 君の声が この胸に聞こえてくるよ」と、いきものがかりが「SAKURA」で歌っているように。