必要は発明の母


今夏発覚した三菱電機の一連の検査不正問題について、外部の調査委員会が報告書をまとめ、「手続きを軽視し、安易に検査手法を変更していた」と結論付けた。

同社はわが国の代表的メーカーの一つだ。会長を辞任した柵山正樹氏は、不正が繰り返された背景として「内輪意識」や「閉鎖的な組織」などを挙げたが、抽象的な弁解ではなく所属する技術者の質を厳しく問いただす反省の弁が欲しかった。

例えば、長崎製作所で製造した鉄道車両用空調装置の検査結果は、単なる数字合わせであり捏造(ねつぞう)だった。その検査は製品出荷のためだけに惰性で続けてきた作業だったのではないか。しかし検査は、製品や部品の改良のためにも必要なものだ。

「設計通りの製品なのに、なぜ出力が合わないのか」と考え、そこから、より良い製品のイメージや改良、発明の芽が生まれる。検査の目的はそこにあり、常にその精度を高めようとする思いと実践が、生きた「ものづくり」につながると言われる。

ノーベル物理学賞の受賞が決まり、プリンストン大で記者会見する真鍋淑郎上席研究員=5日、米ニュージャージー州(時事)

今年のノーベル物理学賞を受賞する真鍋淑郎氏は、気候予測モデルの構築には観測データとの詳細な比較が必要なため、スーパーコンピューターを駆使したという。

真鍋氏は1990年代に日本の国産スパコン開発にも貢献。性能向上を追求し続けたことが、今や世界最速の計算速度となった「富岳」の完成につながった。まさに「必要は発明の母」。三菱の技術者たちのものづくりに必要な心構えだ。