台湾海峡情勢、対岸の火事ではない


台湾海峡をめぐる情勢が緊張の度合いを高めている。1日から4日にかけ中国軍機計149機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入し、挑発・威嚇。台湾の邱国正国防部長は立法院(国会)で「2025年にも本格的な(台湾への)侵攻が可能になる」との認識を示した。

邱部長は「40年余りのキャリアの中で、今の状況は最も深刻だ」とも述べている。国防部が提出した報告書では、25年には中国が台湾海峡周辺を海上封鎖する能力を備えると予測している。

トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたH・R・マクマスター氏=2017年(UPI)

これは4年後の予想だが、マクマスター元米大統領補佐官は、中国の台湾侵攻の可能性について、来年の北京冬季五輪終了後に「危険な時期に入る」と語った。

これは対岸の火事ではない。元補佐官は、日本がミサイル防衛だけでなく、敵のミサイル発射拠点などを破壊する長距離攻撃能力を持てば「懲罰的抑止力にもなる」と抑止力強化の必要性を強調した。

先の大戦の経験から、国が外交・安全保障政策を一歩間違えば、国民の命も暮らしも全て危うくなることをわれわれは学んだ。外交・安保政策は、われわれの生活に直結している。

31日に投開票が行われる衆院選へ向け、各党が公約づくりを急ピッチで進めている。新型コロナウイルス対策や経済政策など、直面する課題への対処は当然だ。しかし、それらの前提となる外交・安保政策が切実に問われている。それを抜きにした公約は政党の責任放棄と言われても仕方がない。