困窮の中、外食残す風習


地球だより

 エジプト人の生活感覚の中でとても驚かされることがある。レストランに行くと、ウエーターが、お客が飲食した食べ物の皿や飲み物のコップを、まだ3分の1程度残っているのに、さっさと持ち去ってしまうのだ。それをそのままゴミ箱に捨てるというのだからもったいない。

 エジプト人は少し残すのが礼儀と思っている。エジプトは歴史的に豊かな国で決して貧しい国ではなかったのだなとつくづく思う。

 ところが最近、痛ましい事件があった。ある女性が、子供用の朝食の準備に5ポンド(約33円)を必要とし夫に願い出たが、夫はそのお金がなく、2人の間でけんかとなり、夫が妻を殺害した。

 エジプトではこの1、2年、物価が上昇、背景には国際通貨基金(IMF)からの融資の条件で緊縮財政を余儀なくされた政府が、国民への財政支援を停止した結果、ガソリンから地下鉄、バス、電気・ガス・水道などが軒並み高騰、野菜や果物、魚介類からパンの価格も日を追って上昇している。給料が上がらないのに出費だけがかさむことから、中産階級が貧困家庭に転落したと言われるほどに生活困窮家庭が増加した。

 さらに政権幹部の汚職を白日の下にさらした告発が、外国からネットを通じて暴露されたことから、ついにその不満が爆発、2週連続のデモが行われた。

 9月末には、100万人規模のデモ行進も呼び掛けられたが、厳しい当局の目を潜(くぐ)り抜けて数カ所で、数百人規模のデモが行われた。

(S)