露店商売の“異変”
地球だより
エジプトでは、基本的に商品は商店から買うのが一般的ながら、地下鉄の駅前などで、商品を地面に並べて売っている露天商も多い。野菜などは、田畑から収穫したものをそのままトラックに積み込んで運んできた、というような雰囲気で売っている。
しかし、正式な販売許可を持っていないためか、時々警察官がやって来て、商売をやめるよう追い立てる。彼らは手早く店じまい(?)をして、どこかにさっと消えてしまうが、数時間後にはまた戻ってきて商売をしている。
ところが最近、ちょっとした“異変”に気が付いた。私の住む地域の地下鉄駅付近で、軍のものと思われる車両が、肉類を売り始めたのだ。かなりの住民が群がって買っている。市価に比較し、かなり安いという。軍の商売は私の住む町だけではなく、全国的に拡大しているという。
噂(うわさ)によれば、軍は今、物品の商売のみならず、郵便局や電話局などをも管理し、全情報が軍の下に一括管理されるようになってきているという。
長期独裁政権の打倒と民主主義の確立を目指した「アラブの春」で、国民は一時、民主主義の理想を目指したが、一方で治安が悪化、観光客が激減、エジプトは経済的に混乱期を通過した。
イスラム政権を経て軍が実質管理する体制へと移行、治安が安定したことから観光客は戻りつつあるが、一方で経済と治安の安定のためとして、言論や表現の自由が圧迫されているとのぼやきも聞かれる。自由・民主主義と軍政をいかに調和させるかエジプト国民は今、問われている。
(S)