日本カレーの勝負どころ
地球だより
雪舟は水墨画の本場・中国に渡っている。その中国でも、「これより右に出るものなし」との評価を与えられたというから、水墨画で新境地を開いた雪舟は、男子の本懐を遂げたと言っていいだろう。
さてカレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)が、本場のインドに進出するという。ココイチの夢がかなうのかどうか、実現すれば快挙だ。
ただ個人的には、それほどたやすくはないと思っている。日本のカレーは海軍がもたらしたもので、波があってもこぼれないようにとルーにトロミを付け加えたものだ。その点、インドのカレーはさまざまな香辛料を加えただけのさらりとしたスープだ。
昔、隣人がインド人だった折、子供が同じ年頃だったこともあって、家庭同士の付き合いがあった。
ある時、インド人に日本のカレーを食べてもらって、感想を聞いたことがある。答えは、「これはカレーじゃない」というものだった。その印象からすると、ココイチのインド進出は冒険的なものになることは必至だ。
それでもココイチなら、インド人も納得するカレーにいつか仕立て上げてくれそうな気がする。
現地で背水の陣を敷いて、インド人が納得する味に仕立て上げる創意や工夫の力はココイチは持っていると確信するからだ。
野球の野茂投手やイチローも同じようなチャレンジャーだが、大きな壁に立ち向かっているときこそ、これまでの実績の上に胡坐(あぐら)をかくような立場とはかけ離れ、精神の充実度は極めて高いものがある。ココイチがインドでどう一皮むけるのか、楽しみだ。
(T)