大雨と断水の皮肉な二重苦


地球だより

 現在マニラ首都圏は深刻な水不足で、広範囲の地域で長時間にわたる断水が続いている。その一方で、大雨による冠水にも悩まされるなど、市民は相反する二重苦に見舞われている。

 断水の原因は降雨量不足により、マニラ首都圏の水がめとなっているダムが記録的な水位低下に直面しているためだ。フィリピン気象庁は、雨季に入ったことでさらなる雨が期待できるとしながらも、エルニーニョ現象の影響で例年よりもかなり少ない降雨量になると予測。早急な水不足の改善は難しそうな状況だ。

 確かに雨季を迎えたことで、夕方から夜にかけて南国特有の激しい雷雨に見舞われることが多い。これにより多くの地域で道路が冠水して渋滞が悪化するなど、市民生活に影響を及ぼしている。しかしながら、この程度の雨ではダムの水位にはほとんど影響がないようだ。

 マニラ市内に住む知人は、「外は道路が川になるほどの大雨なのに、家の中は断水でシャワーも浴びれない」と、矛盾する状況に不平を漏らしていた。彼が住む地域では、午後4時から午前7時まで、実に15時間にも及ぶ断水が続いているといい、水を貯(た)めるために大きなポリバケツの購入を強いられたという。

 マニラ首都圏の人口は増加の一途をたどっており、かなり以前から新しいダムの必要性が叫ばれていた。しかし渋滞対策と同じで、長期的な計画が苦手な国民性がここでも露呈した格好だ。

(F)