男子家を出ずれば
地球だより
「男子家を出(い)ずれば七人の敵あり」のことわざを地で行く一日があった。
カイロ在住の邦人仲間の会合に行こうと地下鉄に乗り、到着駅で降りようとしたところ、乗客が降り切らないうちに乗る客が詰め掛けた。エジプトでは日常茶飯事の光景とはいえ、結局、次の駅で降りざるを得なかった。
改札口で乗り越した理由を説明したところ、駅員は石頭。仕方ない。形相険しく、大声で「このばか野郎、石頭」と日本語で怒鳴ったところ、あまりの剣幕に驚いたのか、改札口を通してくれた。戻るため反対側の改札口でも大声でぶつかろうとしたところ、向かい側の大声を聞いていたのか、切符確認だけで通過した。
次に待ち構えていたのはタクシーの運転手だった。タクシーを拾った時、運転手はいくら払うかと聞いてきた。ははあ、メーターを取り付けていないなと思い、それを確認した上で、いくらだったらいいのかと尋ねたところ、通常の3倍の値段だ。
「高過ぎるよ。じゃ降りる!」とドアに手を掛けたところ、2倍の値段に下げてきた。決意を固めて普通の値段を言い、「おまえはメーターを付けてないな!警察を呼ぶぞ!」と、アラビア語で叫んだ。
言葉を少々話せることに気付き、通報を警戒したのか、そのまま車を走らせた。アラビア語で、「右、左、真っすぐ」と指示したことから彼は観念したのだろう。ドアを開けて車の外に出、普通の料金だけ渡した時に運転手は何か言いたそうにしたものの、そのまま別れた。
やっと到着した会場のドアには内鍵が…。ここでもひともんちゃく、ことわざが身に染みた一日だった。
(S)