フィリピンの減らぬ流れ弾の犠牲者
地球だより
フィリピンの年越しの風物詩といえば盛大な花火で、静寂で迎える日本のお正月とは正反対の風習となっている。賑(にぎ)やかなのは結構だが、毎年のように銃を祝砲代わりに撃つ輩(やから)が後を絶たず、今年も大きな問題となっている。
一体、何㌧の火薬が一晩で消費されるのか分からないが、この国の元旦は路上に残された大量の花火の破片と、スモッグを見て迎えることになる。朝の街並みはまるで深い霧がかかったかのように見晴らしが悪く、いつもは見えているビルがまったく見えない状態。花火屋は大もうけだが、どれだけ環境に悪影響を与えているのか想像もつかない。
それでも庶民たちは、悪霊を追い払い、ラッキーな新年を迎えるという名目で、手投げ弾のような破壊力の違法花火で指を吹き飛ばす輩が出ようが、子供がけがを負おうが、この風習をやめる様子はまったくない。
中でも最悪なのが祝砲代わりに、拳銃を発砲する連中が大勢居るということで、今年も幼い二つの命が犠牲になった。一人は大みそかに家で寝ていた赤ん坊で、トタン屋根を突き破ってきた銃弾が頭に当たり死亡。もう一人は2歳の男の子で、路上で頭に銃弾が当たり死亡した。
去年も7歳の女の子が流れ弾に当たって死亡した。賞金を懸けて犯人を探しているが、1年たっても逮捕には至っていない。
登録されていない違法銃を使われると銃弾を調べても、犯人の手掛かりにならないため、捜査は難航し迷宮入りとなることが多い。違法銃の取り締まりを徹底しない限り、新年の悲劇はなくなりそうにない。
(F)