バス準公営制


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 50、60代の壮年層にとって、田舎のバスは遠い昔のかすかな思い出だ。1970年代になっても、田舎の村には土煙が舞う非舗装道路を走るバスが唯一の交通手段だった。田舎の通学バスはいつもぎゅうぎゅう詰めで、バス案内嬢(女性の車掌)が生徒たちを力づくで押し込んだ後に「オーライ」と叫んでいた。当時、バスの事業者は地域の有力者として振る舞った。近頃は乗客が減って、1日2~3便に運行回数を減らして、命脈だけ維持しているところが多い。

 バス会社が収益性だけを求めるようになって、需要が多い一部地域にだけ路線が偏る問題が発生した。人里離れた場所にはバスが入っていかなかったり、配車間隔があまりにも長くて不便を強いられることが多かった。2004年7月、ソウル市が全国で初めて導入したバス準公営制は大衆交通の利用環境に革命的な変化をもたらした。ソウル全域に路線が細かく敷かれ、バスの利用がはるかに便利になった。バス乗り換え制度が導入されて、追加の料金負担なしで数回バスを乗り換えて移動できるようになった。

 先週、(バス運転手たちが賃金保全を求めてストライキに入る)バス大乱を防ぐことができたカードのうちの一つがバス準公営制の拡大施行だ。準公営制はバスの運行を民間企業に任せ、運営に伴う赤字を財政で補填する制度だ。

 現在、ソウル、釜山など七つの広域自治団体と京畿(道)など一部の広域バス路線で施行中だ。(それを全国の広域バス路線に拡大することにした)収益性が乏しい地域まで路線を拡大できるという長所はあるが、問題は資金だ。昨年、関係自治体がバス会社に支援した予算規模は総計1兆930億ウォンに達した。ソウル市の準公営制実施初年の支援金は820億ウォンだったが、昨年は5400ウォンと6倍以上に跳ね上がった。

 ソウルの41市内バス会社の昨年の監査報告書を見ると、25社が純利益の約70%を配当(197億ウォン)に使ったことが判明した。市の支援を受けて赤字を免れている業者たちの配当の大部分が少数株主に集中している。親族・姻族を幽霊社員として登録して資金を横領し、帳簿を捏造(ねつぞう)して不正な支援金を受けとったりもした。監査システムが備わっておらず、業者たちのモラルハザードが蔓延(まんえん)しているのだ。税金で“子孫万代”にわたって黒字が保障される“バス族閥”を放置していいのだろうか。

 (5月20日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。