“読書人事”の功罪
盧武鉉元大統領は2004年5月、弾劾棄却が決定された直後、青瓦台(大統領府)の組織改編を断行した。この人事で、演説チームの傘下に「リーダーシップ秘書官」という聞きなれない役職が新設された。読書狂だった盧元大統領が(憲法裁判所による)弾劾(審査の)期間中に読んで感銘を受けた『ドゴールのリーダーシップと指導者論』の著者である李柱欽・外交部アジア太平洋局審議官を大統領府の秘書室に抜擢(ばってき)するためにつくった官職だ。
盧元大統領が人事に自分の読書目録を連係させたのは、これだけにとどまらない。その年の11月、南米歴訪を控えて耽読した書籍『コロンブスからルーラまで』の著者であるソン・ギド全北大教授も重用された。ソン教授は盧元大統領が南米歴訪を終えて帰国した直後の12月、国家均衡発展委員会の委員に起用され、その1年後にコロンビア大使に抜擢された。当時、伊永寛・外交部長官(『21世紀の韓国政治経済モデル』)、呉盈教・行政自治部長官(『変化を恐れれば1等はない』)なども、盧元大統領が読書を通じて人選した人物に数えられている。
自叙伝『運命』で自ら“活字中毒”だと表明したほど読書が好きな文在寅大統領も幾つかの人事で感銘を受けた書物の著者を起用した。“読書人事”や“読書政治”という言葉が生まれるほどだ。代表的な事例が少し前に大統領経済科学特別補佐官に委嘱された李正東ソウル大産業工学科教授だ。文大統領は2015年、李教授などソウル大工学部の教授たちが書いた『蓄積の時間』を耽読したという。
権九勲・北方経済協力委員長は、『なぜ経済統一なのか』、キム・ヒギョン文化体育観光部次官補は『異常な正常家族』という本で因縁が結ばれた。
今度の3・8内閣改造で登用された金錬鉄・統一部長官候補者も、著書の『交渉の戦略』が大統領選挙の候補者時代の文大統領の読書目録に含まれていたという。読書を通した“求人”は人事権者の人材プールを広げることには役立つが、“読書人事”の成功する確率は果たして高いのだろうか。専門性は知ることができても、リーダーシップや性格など他の徳目を把握するには限界があるためだ。
前代未聞のリーダーシップ秘書官も、どんな仕事をしているのか、疑問ばかりを生みだしたまま、7カ月で廃止となった。
(3月12日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。