新しいアナウンスのわけ
地球だより
米首都ワシントンの周辺を結ぶ地下鉄には、2種類の車両が走っている。老朽化した旧型と比べ、日本の川崎重工が製造し、2014年から導入されている新型車両「7000系」は、快適で清潔感があり、運良く乗れるとありがたく思う。
この新型車両で先月始まった新しいアナウンスがちょっとした物議を醸した。電車が駅に停(と)まり、ドアが開くと同時に「この電車は7000系です」と説明が流れる。電車が駅に停まるたびにこれが繰り返されるため、一部の乗客からツイッターで「これを聞き続けたら、気が変になりそうだ」といった批判が相次いだ。
しかし、このアナウンスには、安全対策というきちんとした目的がある。この新型車両に乗ろうとした視覚障害者が、車両と車両の間にある隙間を入り口と勘違いしてプラットホームから転落する事故がここ2年間で少なくとも2件起きた。その理由は、旧型は車両と車両の間が鎖で繋(つな)がれているが、新型にはそれがないため、杖(つえ)などでそこが入り口ではないと確認できなかったからだというのだ。
全車両に鎖を新たに取り付けるには一定の時間がかかるので、運営事業者が一時的な安全措置を講じた。車両の種類を告げるアナウンスはその一つだ。
ツイッターで不満を述べた人たちも、その後理由を知らされて、「良い目的のためだと分かってうれしい」などと納得。一見無意味に思えても、違う立場から見れば、それなりの理由があると分かる良い例だ。
(Y)