天に昇るカタクチイワシ
地球だより
あるエジプト映画を見て、エジプト人が海と言うとき、三つの海を想定することを知った。地中海に紅海、それにナイル川だ。
その方式でトルコで海というと、地中海にエーゲ海、黒海となる。かようにトルコは三方を海に囲まれているが、残念ながら、魚を食べる食文化がそれほどない。
もともと遊牧民ということや、内陸部の面積が広いこともあり、ケバブなどの肉料理の方が身近なのだ。それでも黒海とマルマラ海をつなぐボスポラス海峡を東西から挟み、海に囲まれた商業都市イスタンブールでは、魚は庶民の台所にしっかり根を下ろしている。
イスタンブールの名所の一つである金角湾をまたぐガラタ橋では、多くの釣り人で賑(にぎ)わう。手ぶらで来ても、橋の上には貸し釣り竿(ざお)があるし、餌もここで調達できるのだ。
大公望たちの数はざっと200人。狙うのはカタクチイワシだ。
掛かった!
引き上げられた竿には、3匹のカタクチイワシが掛かっている。手際よく針を外し、バケツに放り込む。元気のいいカタクチイワシが1匹、バケツから飛び出た。すると子供が待ってましたとばかり、つかんで上空に放り投げた。それを上空を舞うカモメが、パクリと空中キャッチ。
東洋の伝説では、滝を登った鯉は龍になる。ここでは釣り上げられたイワシは、鳥葬にされる。同じ天に昇るのだが、こちらの方はちょっと悲しい。
(T)