ケリー氏の外交は偽善的
米コラムニスト マーク・ティーセン
イラン外相と極秘会談
核合意の離脱阻止へ「共謀」
民主党は、民主主義の根底を崩そうとする外国との共謀に対して強い怒りを訴えてきた。だが、ケリー元国務長官が1度ならず、2度もイランの外相と極秘で会談し、トランプ大統領のイラン核合意からの離脱をいかにして阻止するかを協議したことが明らかになったことについては怒っていないようだ。
イラン外務省の報道官は、ボストン・グローブ紙が報じたケリー氏と外相との会談を認めた上で、「イランは、トランプ氏だけが米国とは思っていない。現在の政権だけが米国ではない」と語った。どういう意味だろう。イランはテロ国家であり、イラクで何百人もの米国人を殺害した。イランの指導者らは集会を開き、そこで何千人もの人々が「米国に死を」と気勢を上げている。ケリー氏は、米国の敵と協力して、選挙で選ばれた合衆国大統領の外交政策を阻害しようとした。
敵国と共謀する米国人は私は嫌いだ。
ケリー氏がしたことは、イラン指導者らとの会談にとどまらない。ロビー活動の一環であり、欧州連合(EU)の指導者らとの電話、ドイツ、フランス両国の大統領との会見も行われた。
ボストン・グローブ紙によると、ケリー氏はその中で、「フランス語と英語で、制裁と中東地域の核の脅威についての詳細」を協議したという。
◇ローガン法抵触か
トランプ氏はツイッターで、ケリー氏はローガン法に抵触した可能性があると指摘した。ローガン法には「いかなる合衆国市民も、…米国との紛争、論争に関連して外国政府…の方策、行為に影響を及ぼす目的をもって、または、米国の方策を挫(くじ)く目的をもって、合衆国当局の許可なく、直接であれ、間接であれ、外国政府…との通信または交流を開始または継続した場合、本条項に基づく罰金、または3年以下の懲役、または両方に処す」と記されている。160年以上の間、誰もローガン法で起訴されてはいない。保守派法律学者のほとんどは、この法律を違憲と考えている。
ケリー氏がしたことは恐らく違法ではないが、非常に偽善的だ。2015年にコットン上院議員ら共和党の47人の議員がイランの指導者に書簡を送り、国際合意を承認する憲法上の議会の役割について説明した。これに反発したケリー氏は当時、「この書簡に完全な不信をもって対応する」と語った。「交渉中の指導者らに書簡を送るとは…まったく驚くべきことであり、…2世紀以上にわたる米外交の前例を無視している」と訴えた上で、「課題が何であれ、大統領が誰であれ」このようなかたちで干渉することはないと主張した。3年で何が変わったのだろう。
コットン氏は、現職の上院議員だ。外交への憲法に定めた役割というものがある。ケリー氏は一民間人だ。
憲法に定めた役割は持たない。
◇議会支持得られず
ケリー氏の擁護者らは、同氏をヘンリー・キッシンジャー氏ら、世界の指導者らと定期的に会談する歴代国務長官にたとえる。
ケリー氏のスポークスマンは「ケリー長官は今も、世界中の元外相らと連絡を取っている。過去のどの国務長官も同様だ」と指摘した。しかし、キッシンジャー氏は、独自外交はしなかった。外国の指導者に会う時は通常、ホワイトハウスと調整し、大統領のメッセージを携えることもある。会談後は、政府高官に結果を報告する。だが、ケリー氏はしていない。
ケリー氏が民間人として外交に口を挟んだのはこれが初めてではない。1970年には、パリに飛び、北ベトナム人らと会った。キッシンジャー氏が、パリ和平協定を交渉していた最中のことだ。ケリー氏は当時、自身の行動が「民間人の行動としてはぎりぎり」と認めていた。しかし、先月したことは、ぎりぎりを超えている。
もっといい合意が交わされていれば、ケリー氏が自分勝手な外交をする必要はなかったはずだ。ケリー氏が交わした合意は、上院の単純過半数すら得られず、条約の批准に必要な3分の2にはるかに及ばなかった。
共和党のサス上院議員はさらにこう指摘した。「(オバマ政権は)議会の支持を得ることなく、イランと悪い合意を結んだ。…米国の外交政策は、大統領が主導し、議会が承認し、国民に誠意を持って提示されることで、発展し続ける」。トランプ氏の合意離脱でケリー氏が責めるべきは、ケリー氏自身だ。ケリー氏に、米大統領と戦う米国との敵と共謀する資格はない。
(5月11日)






