タマリンドを生業に
地球だより
インドシナ半島には日本にはない豆の木がある。鞘(さや)が80センチ近くにもなるズールーラブビーン(モダマ)やタマリンドがその一つだ。ホーチミン市には街路樹として植えられたタマリンドの木の実を集めて生計を立てる人々がいる。酸味と甘味があるタマリンドの実は、料理に欠かせない調味料でもあり商品価値がある。
メコンデルタ地方チャビン省出身のティエップ氏(40)は収穫期を迎えると毎日、市内のタマリンドの並木道で、長さ約15メートルの棒を使って収穫した実を売って家族を養っている。
日本なら、さしずめ秋のイチョウ採りのような仕事だ。なおイチョウは、ただ拾えば済むがタマリンドは技術が不可欠だ。タマリンドの実を収穫する仕事は単純に見えるが、実を落とす時に使う棒は重さが20キログラムもあり、持ち上げるだけでも大変な力仕事だし、棒を倒さないようしっかり固定させないといけない。車や人が通る道路脇の仕事だから、重い棒が倒れれば事故にもなりかねないのだ。
だからティエップ氏は車や人通りの少ない場所を、あらかじめ選んで仕事を始める。山なりに実ったタマリンドの木であれば、そうした木を4、5本も処理すれば一日の仕事を終えることができる一方、そうした木に当たらなければ、通りをいくつ回ってもほとんど収穫がない日もある。自分で育てる手間が省ける一方、自然相手の仕事だから雨が降ったり、嵐に見舞われたりとなかなか大変な仕事だ。
(T)