中国も脅かす北朝鮮の核
今月3日、北朝鮮の6次核実験は米国地質調査所によるとマグニチュード6・3の人工地震を記録した。その爆発力は広島級原爆(15キロトン=TNT火薬換算)の10倍以上である160キロトンに達するという。
北朝鮮は大陸間弾道ミサイルに搭載できる水素爆弾を完成したと発表した。日本も「水爆実験だった可能性も否定できない」との判断だ。原爆はキロトン規模で都市一つを破壊出来るが、水素爆弾はメガトン規模の爆発力で一国全土を焼け野原に変貌させる威力がある。
そのため韓国の親北・対話路線を主張してきた文在寅大統領も厳しい対抗措置と最大の制裁に急旋回した。今年12月1日には斬首作戦実行の特殊部隊を設置すると発表し、渋っていた高高度防衛ミサイル(THAAD)の完全配備も決定した。
一国を完全に破壊し得る水素爆弾を手に入れた敵から生き残るためには当然の対応策である。
戦争は軍隊経験のない指導者が引き起こす場合が多い。今回、北朝鮮の危険な核実験は中国にとっても脅威となりかねない。
金正恩は親中派の張成沢(叔父)と中国が保護した金正男(兄)を殺した。また、中国の全都市が弾道ミサイルの射程に入っているだけでなく、北朝鮮の核保有が韓国と日本の核開発に名分を与えかねない。中国が最も恐れるのは恐らく韓国と日本の核開発だろう。
従って、中国も北朝鮮の核を前向きに阻止しなければならない状況に直面している。対北石油供給中止に動く可能性も高まるわけだが、その場合、北朝鮮が核の放棄や凍結という譲歩路線に出るかというと、正面突破と瀬戸際外交を繰り返した前例に照らして見れば、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦搭載弾道ミサイル)の発射を繰り返す可能性の方が高い。
北朝鮮は1992年の韓中国交樹立の時、中国から裏切られたと受け止めており、歴史的にも日本より中国に対する恨みが大きい。
北朝鮮の米本土まで届くICBMの配備は1年以内と見られる。米国にとってその危険性を取り除く期間は1年しかないのだ。
米国は本土まで届く北朝鮮のICBMを絶対許せない。一方で、北朝鮮は体制保護のため、核・ミサイルを絶対手放さないだろう。しかし、それこそ、逆に3代後継体制の崩壊を招く危険性を包含している。
現在の危機が平和的にソフトランディングするのが北朝鮮には最善の策である。唯一指導者は自分の命が奪われかねない危険な冒険をやめるべきだ。
(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)