米軍特殊部隊、北有事へ作戦本格化

ビル・ガーツ

 トマス氏は下院軍事委員会「新たな脅威と可能性小委員会」での証言で、陸海空特殊部隊が韓半島に駐留し、有事に備えていることを明らかにした。同氏によると、特殊部隊は、世界80カ国以上に約8000人が配備されているという。

 特殊作戦軍報道官によると、特殊部隊は、北朝鮮の核兵器、移動式ミサイルの運搬手段の場所をつかみ、破壊する任務を負うことになる。また、有事の際の兵器の国外への持ち出しを阻止する任務も負う。金正恩朝鮮労働党委員長ら北朝鮮幹部を殺害するための作戦を行うこともあり得るという。

 米国防当局者は、特殊部隊は原子炉や研究所などさまざまなタイプの核施設に対する秘密作戦の訓練を実施しており、実際の作戦行動に備えて、北朝鮮の核施設の実物大の模型が米国内に作られていることを明らかにした。作戦に携わるのは、海軍シールズのチーム6、陸軍のデルタフォースなどの精鋭部隊だ。

 トマス氏によると、特殊作戦軍は1月に大量破壊兵器への対応任務を戦略軍から引き継いだばかりで、これには、核兵器の拡散の阻止や核兵器使用後の処理も含まれるという。

 北朝鮮は20発の核爆弾を所持しているとみられ、長距離ミサイルに搭載するための核弾頭の小型化を進めている。また、大量の化学・生物兵器も所持していることから、有事にはこれらの大量破壊兵器の使用、拡散を阻止することが重要任務となる。

 北朝鮮の核施設の多くは、強化された地下施設に設けられ、全国に分散されているとみられている。

 トマス氏は証言で、ダンフォード統合参謀本部議長が作成した新戦略の中で北朝鮮は、テロ、ロシア、イラン、中国と並ぶ「現在の持続的」軍事的脅威の一つと位置付けられていることを明らかにした。

 トマス氏は「がむしゃらに核兵器、大陸間弾道弾の開発を進める北朝鮮はこれまで、地域内の脅威とみられてきたが、地域を超えた通商、軍事、政治的ネットワークによって、今では世界的な脅威とみられている」と指摘した。

 韓国軍特殊部隊は、北朝鮮の脅威に備え高度な訓練を受けているが、ステルスヘリ・航空機、その他のハイテク・先進兵器など米軍特殊部隊が使用している装備を保有していない。

 ハリス太平洋軍司令官は最近の議会証言で、「金正恩氏は米国の都市への核先制攻撃の能力の獲得を目指すことを公言しており、実験を行うごとに、この目標に近づいている。失敗が公になることを恐れてはいない」と、北朝鮮の核の脅威が高まっていることを指摘していた。