フィリピンの新大統領VS犯罪組織


地球だより

 次期フィリピン大統領のドゥテルテ氏は、犯罪者の殺害に賞金を懸け、さらに死刑の復活を主張するなど、犯罪撲滅のために手段を選ばない姿勢を鮮明にしている。しかし、犯罪組織も黙ってやられるつもりはないようだ。

 最初の6カ月で麻薬密売などを含む、あらゆる犯罪を激減させると公約しているドゥテルテ氏は、500万ペソの賞金を懸け、市民に麻薬組織幹部の殺害に協力を求めた。

 これに対し刑務所に収監されている犯罪組織の幹部が、5000万ペソの懸賞金を出し、ドゥテルテ氏の暗殺を企てているという情報も流れるなど、大統領就任前に犯罪撲滅をめぐる激しいつばぜり合いが繰り広げられている。

 既に各自治体ではドゥテルテ氏の方針に呼応するように、治安改善に向けた動きが活発化している。マニラ首都圏では午後10時以降の未成年者の外出禁止や、路上など公的な場所での飲酒禁止を徹底するための摘発が立て続けに行われ、多くの逮捕者が出ている。

 またミンダナオ島の南コタバト州では、ドゥテルテ氏の麻薬密売に対する強硬な姿勢に、死を恐れた23人の売人が自首した。

 まだ正式に大統領に就任していないにもかかわらず、彼の犯罪撲滅に懸ける熱意は、国民や警官そして犯罪に手を染める悪党たちにも確実に伝わっているようだ。しかし熱しやすく冷めやすい国民性ゆえ、この勢いがあと6年間も続くのか、いささか心配にもなる。

(F)