「音速」鉄道開発への不安
地球だより
先月中旬、米ネバダ州の砂漠で新高速交通システム「ハイパー・ループ」の走行実験が公開され、次世代の移動手段として大きな注目を集めた。
「ハイパー・ループ」は、直径3・3㍍のチューブ管の中を細長い車体が浮いた状態で走行するシステムで、最高時速は音速並みの約1220㌔になるという。日本のリニア中央新幹線は最高時速約500㌔の計画だから、実現すれば世界最速の鉄道になるのは間違いない。
CNNテレビによると、2019年までに貨物列車として運行を開始し、21年までに人を乗せて走行する予定だ。総工費は70億㌦(約7500億円)前後で、現在計画しているカリフォルニア高速鉄道の10分の1ほどに抑えられるという。
一方で、初の走行実験からわずか5年で開業することに対する不安の声は多い。
日本のリニアは1997年に試験走行が開始されてから、2027年の開業までに30年の期間を費やしている。「ハイパー・ループ」はまだ車体を浮かせた状態でのテスト走行さえ行っておらず、公開実験でも米メディアが予定として伝えていた速度より遅い時速187㌔だった。
また、音速並みで走る鉄道が事故を起こせば、大惨事につながることは容易に想像できる。年に何度も事故や問題を起こしている全米鉄道旅客公社(アムトラック)を考えると、「ハイパー・ループ」の安全性は大丈夫かと不安になるのは当然だろう。
開発会社には、こうした不安の声に耳を傾けて、開業時期を見直してでも安全最優先で計画を進めてもらいたい。
(Y)