盆栽がつなぐ日米の懸け橋
地球便り
オバマ米大統領の広島訪問で、マスコミが騒がしい。この歴史的な訪問で戦後70年の歴史が一段落し、日米が平和友好の将来にさらに一歩踏み出すことが期待されている。広島は、日米関係の新しい未来を開く懸け橋ともいえよう。
ワシントンにも、広島から来た日米関係の懸け橋がある。米国立樹木園の盆栽・盆景博物館にある「平和の木」と呼ばれる五葉松の盆栽だ。博物館に300点近くある日中米の盆栽の中でも樹齢390年以上と最古で、最も貴重な一品である。
この五葉松はもとは広島の山木家が宮島に生えていた松を、1625年(寛永2年)に盆栽にしたもの。その後代々育てられ、1945年8月の原子爆弾投下も爆心地から3㌔のところで生き延びた。
1976年、米国の建国200周年、終戦30年を記念し、広島の盆栽職人だった山木勝氏からこの盆栽は他の52点の盆栽とともに米国に寄付された。被爆した盆栽が日米友好の印になったわけだ。
実際にはこの盆栽のいわれは、2001年3月に山木勝氏の孫が国立樹木園を訪問して由来を説明するまで、米国側ではほとんど知られていなかった。米国立盆栽財団のフェリクス・ローリン会長は、こう語る。
「爆心地から遠くない山木家に置かれていたこの木の生存自体驚嘆に値する。同じく驚嘆すべきは、山木氏がこのことに一切触れず、これほどの名品を旧敵国であるアメリカに与えたことだ。山木氏は、自分の故郷に原爆を投下したアメリカを許す心でこの贈り物をしたに違いない。山木松は瞬時にして、国際的な平和の象徴になったのだ」
(K)