溜飲を下げる人たち
地球だより
先日のことだ、サンパウロ市内の市場を歩いていると前方から大きな囚人服(白黒)姿の風船人形が歩いてきた。人形の隣には、連邦警察と手書きで書いたTシャツを着たブラジル人が連れ添っている。ブラジル人なら誰もがわかる、資金洗浄の疑いで起訴されているルラ前大統領を模した人形だ。
いかにもウィットが効いたブラジル人らしい趣向だが、ルラ前大統領の人形の周りには人だかりができ、笑いながら人形を携帯で撮影する人や、人形と一緒に自撮りを始める人たちで一杯になった。
ブラジルでは、政治と賄賂は付き物のように昔から考えられてきたが、近年は政治家の腐敗や賄賂に対して世論が非常に厳しくなった。世論をバックに反大統領派と野党はルセフ氏に強く退陣を迫っている。
「ブラジルの政治家は賄賂や腐敗で自分の懐を肥やすだけ。とばっちりを受けるのはいつも庶民だ」。人形の写真を撮っていたフランシスコさん(会社勤務)は、やり場のない怒りと諦めにも似た表情でつぶやいた。苦々しい思いでブラジル政界の汚職を眺めてきた人々の溜飲が下がる日も近いかもしれない。
(S)