たかが人形にあらず


地球だより

 タイでルクテープ人形がはやっている。ルクテープとは「子供の天使」の意味だ。バンコクもタイの人々は「クルンテープ」と呼ぶ。意味は「天使の都」だ。

 このルクテープ人形がすごいのは、子供の玩具としてかわいい人形ではないことだ。気持ち悪いというか、変わっているのは大人がこぞってこのルクテープ人形を手厚く世話し、あやしたりしている点だ。中には人形のご機嫌を取ろうと、有名ブランドの衣装を着せたり、さまざまなアクセサリーを買ったりする婦人もいる。

 極め付けは飛行機に乗る際も、人形の座席を確保し、あたかも自分の子供のように扱う人もいる。結構、こういう人が少なくないためか、せんだってタイ民間航空局は「ルクテープ人形を人間と見なすことはできないため、離着陸の際にはきちんと収納する必要がある」と異例の警告を発した。

 これほど人気を博している最大の理由は、その御利益にある。ルクテープ人形は、本物の子供の魂を持ち、幸運をもたらすと信じられているのだ。

 人気に火が付いたのも、この人形に服を着せて食事を与えていたら仕事で成功したと、著名人らがネットで発言したことがきっかけとなった。

 タイでは田舎に行くと、家の前に案山子(かかし)が置いてあったりする。これは生まれた子供を悪霊から守るための犠牲の燔祭(はんさい)役として置かれたものだ。

 タイの人形は民俗学としても興味ある対象だ。

(T)