北朝鮮ミサイルICBM級に
中国説得に、より前向きな抑止策を
北朝鮮は長距離弾道ミサイルの発射をいったん2月8日~25日の間に行うと公式発表しながら、急に日程を変更して2月7日発射に踏み切った。これは迎撃を避けるための詐術である。日米韓イージス艦のSM3対空ミサイルとPAC3の迎撃態勢を弱めて迎撃を回避したことで、発射は成功した。
弾頭に搭載した衛星を本軌道に乗せたのは90%以上成功した証しであり、衛星が発信する電波を受信すれば100%の成功になる。
4年前に発射した弾道ミサイルは射程1万㌔㍍でアメリカ西海岸まで届く。今回は射程が1万3千㌔㍍でアメリカ東部のワシントンまで届く。文字通りICBM(大陸間弾道ミサイル)級まで技術が進歩したといえよう。
中国の説得努力にも拘(かかわ)らず発射に踏み切ったのは、北朝鮮独自の主体性を表そうとする行動であり、北朝鮮の本音の狙いはアメリカの敵対政策をやめさせること、つまり現在の韓国動乱の休戦協定を平和協定に変更し、将来的には米朝国交正常化を目指すものだ。
2番目の目的は武器輸出市場への宣伝効果だ。ミサイルを発射する度に国際社会のメディアは大騒ぎするので、発射の成功を報道することによってPR効果が爆発的に拡大する。北朝鮮は80年代から90年代にスカッドミサイルをイラン、シリア、パキスタンなど中東地域に輸出して年間10億㌦を稼いだ先例がある。
我々は北朝鮮は食糧難で貧しい国という先入観を持っているが、彼らの強みを過小評価してはいけない。核と弾道ミサイルの開発は先端技術分野であり、潜水艦艇の建造やサイバー攻撃、情報心理戦は北朝鮮の得意分野で、冷戦時代のKGBやCIAに劣らない。
北朝鮮の挑発に対する国際社会の制裁もあまり効かないのが現実だ。中国とロシアはいつも北朝鮮への制裁に消極的であり、制裁のカギを握っているのは中国だが、実際に北朝鮮に供給する石油のパイプラインを止めたことがない。万が一、北朝鮮が崩壊したら自分の縄張りが潰(つぶ)れたと受け止めるのが中国である。
もし中国が石油を止めて経済支援を中断したら、北朝鮮は中国から離れてロシアの豊富な天然ガスや石油の供給を求める。北朝鮮のエリート官僚は中国とロシアに片足ずつを掛けて国益を追求する「二股路線」を維持しながら「将軍様!行け!行け!」と煽る政策提言を行っているのだろう。
いずれにせよ中国は北朝鮮の面倒を見なければならない状況に置かれている。従って従来の制裁は効果がなく、もっと前向きな抑止策と強い圧力を仕掛けなければ挑発の繰り返しという悪循環から抜け出せない。米国が韓国、日本、台湾の核武装を容認する劇薬療法もあるが、現実的には、在韓米軍への戦術核再配備、終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイルの配備、そして北朝鮮の核開発放棄を条件として休戦協定を平和協定に変更する交渉も選択肢として望ましいのではないか。
(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)






