北朝鮮核・ミサイルの抑止策

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 1988年、イランとイラクは長期戦の末、弾道ミサイル合戦を繰り返した。当時、イランがイラクのバグダッドに発射した88発のスカッドミサイルは全て北朝鮮製だった。80年代から北朝鮮は弾道ミサイルを中東地域に輸出して年間10億㌦を稼いだ先例がある。

 特に、北朝鮮はイランに弾道ミサイル技術を提供する見返りとしてオイルマネーをもらって防衛産業を支えた。「イラン・北朝鮮コネクション」は厚い。北朝鮮はパキスタンにもミサイル技術を提供してウラン型核技術を導入した経緯がある。

 北朝鮮は1月6日の4回目の核(水爆と主張)実験に続いて、今回は長距離弾道ミサイルの発射準備態勢を整えている。

 核実験と弾道ミサイル発射の狙いは米国の敵対政策を撤回させることが第一の目的だ。現在の停戦協定を平和協定に変えたいということだ。

 第2の目的は金正恩後継体制の維持だ。ルーマニアの独裁者チャウシェスクやリビアのカダフィー政権およびイラクのフセイン政権が崩壊したのは核を持っていなかったからと受け止めている。

 第3の目的は国際社会に技術力を宣伝して武器輸出を伸ばしたいということだ。北朝鮮は核さえ持っていれば国防予算を節約出来るので核・弾道ミサイル開発にこだわる。それで余った国防予算を経済立て直しに回したいのだろう。

 北朝鮮は食糧難で貧しい田舎国家のイメージだが、彼らの強みである核開発、弾道ミサイル技術、サイバーテロ、特殊戦、潜水艇戦力は先進国並のレベルだ。特に、米国、中国など強大国を振り回す外交戦略は国際社会で話題になっている。

 彼らを過少評価したら手痛い目に遭う恐れがある。中国が常に北朝鮮を庇って本格的な制裁に反対しているが、米国が韓国、日本、台湾の核武装容認カードでも出さない限り、中国は本気にならないだろう。

 現実的な対応としては、北朝鮮が核を放棄しないのであれば、在韓米軍に戦術核を再配備すべきだ。終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイル配備も必要不可欠だ。最後に北朝鮮の核開発を放棄する条件として、現在の停戦協定を平和協定に変更する交渉も選択肢として望ましいと考える。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)