いちご世代
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
運動場に時ならぬ観光バスがずらりと並んだ。フロントガラスには光州、釜山、大田などの行き先が書かれていた。「故郷に向かって!」。まだ不在者投票をしていない学生たちのため、総学生会が準備したバスだった。頻繁なデモの末に得た1987年12月の(直接選挙制の)大統領選挙に学生たちの参加を督励する一種のキャンペーンだった。私が人生で最初に投票をした日だった。
去る16日に行われた総統・立法院選挙を控えた台湾の学生街に「帰京しろ民主列車」というポスターが貼られたという。交通の便がなく投票を放棄する学生たちが出ないように、全国12大学学生会連合が借りたバスだった。学生会の投票督励運動、“民主列車”というバスの名前が30年近く前のその時と妙に似ている。
8年ぶりの政権交代、初の女性総統を誕生させた今度の台湾選挙は“民主列車”を生み、利用した若者たちの功が大きかったという分析だ。彼らの中の相当数は、満20歳の今年初めて投票権を行使した、いわゆる“首投族”だった。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は17日(現地時間)、今度の選挙を台湾の“いちご世代”(草莓族)の反撃だと要約した。台湾のいちご世代は自己満足、無関心に慣れきった20~30代の若者たちを指す。一言でいってあまりにもソフトで傷つきやすいという意味だ。青少年期にグローバルな経済危機を体験した彼らは未来を不安に思い、既成の権力に対する反発心が大きい。彼らの親の世代と比べて“台湾人”というアイデンティティーは強い方だ。WSJは「いちご世代が感じる経済的な未来に対する恐れ、中国に対する敵対感が政権交代の動力になった」としている。
「いちご族と呼ばれる若者たちは、りんご(米国のアップル社の象徴)になろうと夢見るが、ざくろ(安い果物)水準の月給をもらいながら一日中、ゴーヤの顔つきをしている」。台湾のある政治家が若者世代の心理を例えた表現だ。恋愛、結婚、出産を放棄した“3放世代”や、さらに自分の家と人間関係まで放棄した“5放世代”と呼ばれるわが国の若者たちの立場とさして変わらない。世界的な経済不況の影が地球全体のミレーニアム世代を覆った結果だ。それでも台湾のいちご世代は今度の選挙で投票を通して自分たちの政治的なパワーを示した。3カ月後には韓国でも国会議員の総選挙が行われる。“3放、5放世代”の選択がとても気にかかる。
(1月19日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。