エジプトで感謝される日本の支援
地球だより
先月、日本人として少なからず誇らしく思う行事に参加することができた。10月10日、カイロ市中央にあるオペラハウスの大劇場で、創立25周年記念行事が行われ、招待客らに対し、オペラハウスが全組織を挙げて演奏やダンスなどを披露、感謝を表し、祝祭を盛り上げてくれた。
初代オペラハウスは1869年に、スエズ運河開通を記念して造られたが、1971年に焼失、その後、日本の支援で88年に再建された。傷心していたエジプト人にとっては、日本の支援がよほどありがたかったのだろうか、日本からの各種支援の中でも特に評価が高く、誰もが日本の貢献を知っていて、われわれは感謝され続けてきた。
国歌演奏の後に上映されたドキュメンタリーフィルムには、焼失と再建の様子が克明に映し出されており、エジプト国民がいかにオペラハウスを大切にしてきたかがにじみ出ていた。イスラム文化に偏りがちな国民の文化・芸術水準を国際的に引き上げてきたオペラハウスの役割はとても大きかったのだ。
功労者が表彰され、鈴木敏郎全権大使があいさつした。他国のために真心を込めて何かを成すことの素晴らしさを味わったひと時でもあった。国家間の友好が間違いなく高められていることを確認できる場でもあった。
それにしても驚くのは大劇場の天井の真ん中に菊の御紋が全ホールを覆うように広がっていることだ。建物の内外どこにも日本が支援したとは宣伝してないが、エジプト人が気付かない形で、徳を隠しながらも証拠をきっちりと残している。驕(おご)らず、誇らず、つつましやかな日本の精神を表現しているのかもしれない。
(S)