バス事故の信じられぬ原因
地球だより
マニラ首都圏で何人も死傷する交通事故は珍しくない。バイクや自家用車の急速な増加も相まって、昭和30年代の交通戦争を髣髴(ほうふつ)させる状況の真っただ中にある。先日も乗り合いバスが大破し22人が死傷する大事故があったばかりだ。
直接的な事故原因は、スピードの出し過ぎによる運転ミスとみられており、コンクリート製の柱に激突したバスの右半分が完全にえぐり取られ、乗客が外に投げ出されるなどして4人が死亡し、18人が重軽傷を負って病院に運ばれた。
しかし現地メディアによると、事故の本当の原因は、ある乗客が運転手に「このバスはスピードが遅くて心臓が悪い自分にはちょうどいい」などと冗談を言ったところ、急に運転が荒くなり、これが事故につながった可能性があるという。ちなみに運転手は生き残ったが事故直後に現場から逃走。冗談を言った乗客はバスから投げ出されて死亡した。
無責任な運転手は、その後、居場所を突き止められて逮捕され、違法薬物の使用が明らかとなった。さらに驚くべきことは、彼が運転していたバスが、当局の認可を受けていない違法バスだったことだ。
つまり何から何まで違法ずくめのバスが、こんな大事故でも起こさない限り、ずっと野放しになっているのが、この国の公共交通機関の現実なのだ。事故を起こしたバス会社は当然、運行停止処分だが、違法バスの運行を横行させている政府当局にも、何らかの改善が必要なのは言うまでもない。
(F)