政府閉鎖と国立公園 米国から


地球だより

 10月に16日間にわたって米政府が一部閉鎖された。80万人近い連邦政府職員が一時帰休し、多くの政府機関が閉鎖または機能縮小した。おかげでいろいろ不便なことが発生したが、最もニュースになった不便は国立公園の閉鎖だ。

 主要国立公園は全米に59あるが、そのほか国立という言葉がつく内務省管理の歴史公園、自然公園などは何百もある。一番多くの人が訪れる国立公園は、ノースカロライナ州、テネシー州にまたがるグレートスモーキー国立公園だ。米東部のアパラチア山脈の一部で、年間900万人がここを訪問する。1日平均3万人近い人が訪れるわけだが、特に閉鎖された10月前半は紅葉シーズンで訪問客が最も集中する時だった。

 テキサス州のメキシコ国境に接するビッグベント国立公園では毎年ハイキングのためそこを訪れているという米国人カップルの遭難がニュースになった。慣れ親しんだ国立公園で野宿しながらハイキングしている途中で、急に政府が閉鎖。急遽(きゅうきょ)公園から退去しなければならない。すぐ近くの州立公園に移動したらいいと言われそれに従ったものの、慣れない場所のハイキングで遭難してしまった。最後はレインジャー部隊に救出されたが、水や食糧も尽き、生死の境をさまよった。

 国内外の観光客が国立公園を訪問するほか、結婚式などの行事の場に使われたりする。政府一部閉鎖のため、キャンセルになった結婚式の数は計り知れない。米国の自然を楽しもうと外国から観光に来たのに、目的地に入れなかったという声も多く耳にした。全く罪作りな政府閉鎖だった。

(K)