ジャックフルーツ


地球だより

 タイの4月は、日本でいえば8月に相当する真夏の盛りだ。この季節は果物が豊富に出回り、フルーツ天国と化す。

 果物の王様ドリアンや、果物の女王マンゴスチンもどっさり市場に出回る。匂いも味も濃厚さが売りのドリアンも、気品のある甘酸っぱさで魅了するマンゴスチンもフルーツ王宮の主人の位置を与えられているのは理解できるが、無冠扱いのジャックフルーツもなかなかのものだ。

 大きいものだと一つが長さ60㌢、直径25㌢ほどの楕円(だえん)形で重さは20㌔ほどもあるジャックフルーツは、キャノンボール(大砲の玉)との異名を持つ。恐竜展などで目にする恐竜の卵にも似ている。表面は黄緑色の楕円形、ぼこぼこした突起に覆われていて見てくれこそ悪いが、味はマンゴスチンに勝るとも劣らない。香りの方もドリアンほどの強烈な発酵臭ではなく、フルーツガムのような甘い香りだ。そして、シャリシャリした歯応えもあって、散歩疲れを癒やす時など最高のフルーツだ。個人的には果物の王様は、このジャックフルーツではないかとひそかに思っているほどだ。

 これほどの大きさなのだから、カボチャやスイカのように、つる性で地上にごろごろなっているかと思いきや、このジャックフルーツは、直接、木の幹に実を付ける。ドリアンは枝に実を付けるが、ジャックフルーツは幹から直接ぶらぶらと実がなる。いずれもこうした木の下を通る時は、要注意だ。中国には「李下に冠を正さず」という言葉があるが、タイでは「樹下ではヘルメット」が正しい。

(T)