共和はまず上院奪還目指せ

チャールズ・クラウトハマー米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

中間選挙まで1カ月

思想色強いオバマ氏の政策

 【ワシントン】建設的な政策がなくても、中間選挙には勝てる。だが大統領選となるとそうはいかない。共和党は、今年の上院選で勝利することが極めて重要になる。その理由はこうだ。

 中間選挙は、現状を否定することで十分に戦える。例えば2010年の選挙は、オバマ政権が最初の2年間に実施したリベラルな福祉政策の是非を問う選挙だった。結果は、オバマ大統領の言葉を借りると、民主党の「完敗」だった。大規模な景気刺激策、失敗したキャップ・アンド・トレード(温室効果ガスの排出量取引)、オバマケアに対する強い反発のために民主党は下院を失った。それとともにオバマ氏の思想色の強いそのほかの政策も葬られた。それは今も続いている。

 これは現状否定の力だ。共和党はこのことに関して負い目を感じる必要はない。野党の使命は反対することにある。言うまでもなく、身の丈に合わない福祉政策は、再構築し、改革しなければならない。ところが、イデオロギー重視の大統領は補助金を拡充、規制を強化し、政府自体も大きくなった。保守政党としてこれを止めようとするのは当然だろう。

 10年は「止める」だけで十分すぎるほどだった。大統領の人気が落ち、政策も破綻している今年の選挙も反対するだけで十分勝てる。共和党は国家的な政策を持っていないという批判もあるが、これは米国が議院内閣制でないことを忘れた指摘だ。米国には、「影の首相」「影の内閣」を持つ組織化され、しっかりしたヒエラルキーを持つ野党勢力はない。地方には共和党と同調する政治組織が500ほどあるが、思想に関してはそれぞれが完全に独立している。

 もちろん、1994年の「アメリカとの契約」は例外だ。これには強いリーダーシップが必要であり、状況も特殊だった。今は、そのどちらもない。

 その必要もない。共和党が今目指しているのは、上院の奪還だからだ。

 なぜ上院奪還が重要なのか。それ自体が最終目的ではない。オバマ政権の針路を阻む必要もない。オバマ氏の政策は、2010年11月2日に下院を失った時に死んだ。14年11月4日に上院を失えば完璧だ。

 しかし、共和党は上院を奪還できれば、2016年に向けて統治能力のあるところを示すチャンスが得られる。

 議会の一院だけでは国家を統治できない。共和党は、1995年と2013年の政府機関の閉鎖から重要な教訓を学んだ。だが、両院を支配すれば、議会審議を強力に進めることが可能になる。

 民主党は、下院共和党がしていることは阻止と反対だけだと主張する。実際には、数百本の法案が通過したが、上院多数派民主党のリード院内総務のところに届くと揉(も)み消されてしまっていた。リード氏は、政治的に難しい投票を民主党議員らに迫る法案はどれも、本会議に上程すらされないようにし、それによって上院は活力を失ってしまった。

 共和党が上院を支配すれば、ホワイトハウスの支持を受けてリード氏が抑えているすべての法案を通過させることが可能になる。改革を大きく進めることが可能になる。中でも重要なのは税制改革だ。法人と個人両方に関する税制が課題となる。それらは支持され、実行可能である必要がある。両院での超党派の支持を容易に得られるようになる。キーストーンXLパイプライン、主に東欧向けの天然ガス輸出などの推進が可能になる。国境警備、エネルギー規制緩和を進め、医療改革を行って強制加入のオバマケアを廃止する。

 大統領が署名すれば、それでいい。拒否すれば結果は明白だ。今度は民主党が拒否政党となる。拒否された法案は、共和党の2016年政策綱領に盛り込まれ、そこで再度議論が戦わされる。

 リスク嫌いの人なら、どうしてそのようなことをする必要があるのかと言うだろう。16年選挙でオバマ氏の政治に真正面から対抗すればいいではないかと言うだろう。

 共和党はそうすべきであり、その意思もある。経済成長、社会的団結、国外での地位がオバマ政権でどうなったかを見れば、民主党にとっては大きなマイナス要因となることは明らかだ。だがそれだけでは不十分なのだ。

 オバマ氏は出馬しない。ヒラリー・クリントン氏は、かつて仕えた現政権から急速に距離を置き始めている。現政権とは違う基盤から出馬するのだろう。夫が築いた、米国が世界の舞台で責任を果たさず怠けていた1990年代の政治ということになる。

 さらに、何かを成し遂げるには権限が必要だ。そのために大統領ポストが必要になる。レーガン元大統領はそれを知っていた。レーガン氏なら、単に反対勢力として1980年の選挙に勝てただろうが、基本政策も持っていた。さらにそのほとんどは、着実に実行された。

 共和党に助言する。上院選で勝利し、法案を作り、大統領に拒否させよ。そうすれば、共和党が何をしようとしているのか国民に示すことができる。それをもって2016年大統領選に臨め。

(10月4日)