米国で人気の農産物青空市
地球だより
米首都ワシントン郊外の自宅近くの教会駐車場で毎週土曜日に開かれている「ファーマーズ・マーケット(FM)」をのぞいてみた。FMとは、近隣の農家が野菜や果物などを直売する青空市のことで、健康志向や食の安全意識の高まりを受け、全米各地で急増している。農務省の統計によると、1994年に1755カ所だったFMは、20年で5倍近い8268カ所に拡大したという。
販売されていた農産物は有機栽培で育てられたものばかり。このため、スーパーで売られている商品より割高。個人的には、直販なのだから安く提供してほしいと思うのだが、それでも飛ぶように売れる。農産物以外にも、チーズやパン、パイ、ジャムなど加工品も販売されていた。
日本でも農産物直売所が盛況だが、FMの大きな違いは、農家がそれぞれのテントで直接販売していることだ。つまり、生産者と消費者が直接顔を合わせ、コミュニケーションを取ることができる。これがFMの一番の魅力かもしれない。
また、筆者が訪ねたFMでは、軽食、飲み物の販売や音楽の生演奏も行われていた。単なる市場というより、住民の憩い、交流の場といった雰囲気だ。FMが果たすコミュニティー活性化の役割が、全米で急増する背景になっていることは間違いない。
もう一つ見逃せないのは食育の効果。肥満の割合が突出して高い米国では、手料理よりもファストフードが好きな人が少なくない。新鮮な農産物がいかに美味(おい)しく、栄養価も高いことを知ってもらう場として、FMは重要な食育の機会となっている。
(J)