空爆の真の目的を説明せよ
効果的な米イラク介入
オバマ氏はレトリックに終始
【ワシントン】イラク政府はオバマ大統領に鎌をかけ、オバマ氏は立派にこれを成し遂げた。米政府は、党派心の強い首相を排除するまで、イラク政府への航空支援は行わないとしていた。
首相が排除されると、オバマ氏は空爆を実施した。
イラク・クルド軍は、米軍の空爆の支援を受けて、モスル・ダムを奪還した。その前の空爆では、シンジャル山の包囲を解き、クルド人が二つの戦略的都市を奪還することが可能になった。これによって、クルド自治区の首都イルビルが「イスラム国」に支配されるのを阻止することができた。
この中で三つのことが明確になった。限定的攻撃でも効果があること、イスラム国が脆弱(ぜいじゃく)であること、そして重要な点、オバマ氏は真剣だが、一時的であること。
最後が最も重要だ。オバマ氏は、この問題を米国が軍事的に解決することはできないと指摘した。これは確かにそうだ。だが、軍事力による局地的な解決は可能だ。それには、米国の航空支援が必要だ。
それは効果を上げている。イスラム国は支配を広げ過ぎた。恐らく1万5000人という少ない兵力で、イスラエルの4倍の面積を支配しようとしている。補給線は延び、空からの攻撃を受けやすくなった。
イスラム国の勢いを止めたことで、心理状態に大きな変化が生じた。ゲリラ軍らの力の源泉は確信だ。イスラム国は拡大し、敵の士気をくじき、世界中から新戦闘員らが集まっている。イスラム国は無敵で、樹立を宣言したカリフ制国家が現実のように見えたからだ。
人々は、弱い馬より、強い馬に従うものだとウサマ・ビンラディンは教えた。これら聖戦主義者らは、どこからともなく現れ、モスル、ティクリートを制圧し、クルド自治区に迫り世界を驚かせた。ここまでは無敵のように見えた。
だが、逆転が始まった。
オバマ氏は、なかなか米軍を投入しようとしなかった。クルドへの武器の供与も遅かった。しかし、イラクのマリキ首相が排除されるまで待ったのは賢明だった。そうしなければ、米軍はイスラム教シーア派のための軍隊になっていた。アバディ氏が、どこまで全イラクをまとめ上げることができるかは分からない。だがオバマ氏は、アバディ氏指名のチャンスをうまく生かした。
問題は、この新政策が当初の説明を逸脱していることだ。オバマ氏は、イラクに戻ったのには二重の理由があると説明した。虐殺を止め、米国人を守ることだ。
オバマ氏の主張によると、イラクへの関与で大量虐殺を阻止した。イルビルの領事館の米国人への脅威もそぐことができた。
イラク関与の理由は当初あいまいだった。1カ所にいる米国人を守るのに空爆は必要ない。脱出すればいいからだ。
さらに、モスル・ダムの奪還は、非常に重要なことだが、当初説明された理由とは無関係だ。そこには、キリスト教徒もヤジディ教徒も避難していなかった。もちろん米国の外交官もいなかった。そこでオバマ氏は次のような説明をした。ダムが破壊されれば、バグダッドの大使館が洪水にのみこまれる。
かなり無理があるが、空爆で200㌔下流の大使館を洪水から守ることができたかといえば、答えはイエスだ。なのにどうして、本当の理由を言わないのか。誰もが知っていることだ。ダムは、重要な戦略的価値を持ち、ダムを支配すれば、この戦いの力のバランスは変わる。
どうして、空爆の真の目的を発表しないのか。イスラム国を止め、封じ込め、勢力をそぐという本当の目的があるはずだ。
当面はオバマ氏は、これまでの説明でやり過ごすことができる。しかし、空爆を続けるのならば、それは無理だ。石油を獲得し、先進兵器を持ち、狂信的な聖戦主義国が中東の中心部に存在することを受け入れることはできない。それには、介入を拡大することが不可避だ。
さらに悪い連中がいる。おおっぴらに敵を処刑し、女性を奴隷にし、男をまとめて殺害している。土地、物、力を求める普通の悪者ではない。野蛮な狂信者であり、喜んで殺人を行い、血に飢え、神聖な儀式として罪のない人々の喉をかき切る。
空爆が地上のイラク・クルド軍の支援で効果を上げたことが分かった。しかしオバマ氏が、イラクを元に戻すための戦略を真剣に進めようと思うなら、国民の支持が必要になる。どのような利害があり、どの程度拡大するかを説明する必要がある。米国人記者ジェームズ・フォーリー氏の殺害に対しオバマ氏は、言葉巧みに弱気な対応しかせず、チャンスを逃してしまった。
オバマ氏はフォーリー氏殺害を受けて「このような人々は最終的には失敗する」と語った。そうかもしれない。しかし「最終的に」では遠過ぎる。さらに何千人が死ぬことになる。軍事介入の拡大で、その期間を縮めることができる。チャーチルとルーズベルトはこれを知っていた。











