タイの不法就労


地球だより

 タイの首都バンコクでは建築現場で働く男性ミャンマー人や女中として働く女性ミャンマー人を多数見掛ける。

 タイ労働省によると外国人労働許可証(ワークパーミット)発行数は4月時点でミャンマー人が104万人、カンボジア人19万人、ラオス人6万人となっている。ただ、労働許可証取得の手間や経費を嫌う雇用者も多く、不法就労者はほぼこれらと同じ百数十万人と見込まれている。

 不法就労者の多くは建築現場や漁船といった「きつい、汚い、危険」の「3K」職場で働いている。記者もマグロ漁船の船員を取材したことがあるが、睡眠時間は3時間、一度乗り込むと半年もの海洋生活を強いられ、約束の手当は割高な食費やたばこ代金などで天引きされほとんど手元に残らないばかりか、漁労長の機嫌を損ねると船から蹴(け)落とされ、海の藻屑(もくず)と消える現在の奴隷船の実態を知らされ愕然(がくぜん)とした覚えがある。

 なおタイ軍事政権はミャンマー、カンボジア、ラオスからの不法就労者に労働許可証発行業務を一括して行うワンストップセンターを国内の全都県に設置することを決めた。

 ちなみにタイにいたカンボジア人の不法就労者は、タイ軍政が不法就労者を取り締まるといううわさが流れ、6月には約20万人が陸路で帰国した経緯がある。そのためタイでは建設現場での労働者不足が顕著となり、建設業者などが悲鳴を上げた。今回の措置は、そうした産業界の声を反映した措置だが、一方で不法就労斡旋(あっせん)などでうごめくアウトロー組織一掃を狙った軍政の意向も反映している。

(T)