地球の未来を案じさせる砂嵐 ーブラジルから


 先日、世界自然遺産のパンタナール湿原に近いブラジル中西部の街で砂嵐に遭遇した。パンタナールでは、数年前に森林火災の只中(ただなか)に居合わせたことがあるが、今回の砂嵐もそれに劣らぬ体験となった。

 滞在先のホテルで、「砂嵐が来たぞ」というスタッフの声に驚いて外に出てみると、先ほどまで晴れ間の見えていた空が赤茶色に染まっている。「外にいると危ないぞ」との声で建物の中に戻ると、間もなくホテルの外は強風と砂に覆われた。まだ夕方にもならない時間だったが、外は夜のように暗くなった。

 砂嵐の後は、雷を伴う豪雨だ。ホテル近くの大きな木が、電線を巻き込みながら強風でなぎ倒され、一帯が停電に見舞われた。

 気象観測所によると、マトグロソドスル州を襲った砂嵐は、最大風速35㍍近くに達した。50以上の都市がインフラに甚大な被害を受け、1週間近く停電が続いた街もあった。

 都市が砂塵(さじん)で覆われる様子は、人類滅亡の危機を描いた米映画「インターステラー」の冒頭部分を見ているかのようだった。映画では、地球は巨大な砂嵐が次々と発生する異常気象に襲われ、食糧の枯渇から人類は存亡の瀬戸際に立たされていた。

 気候学者によると、ブラジルのアマゾン熱帯雨林やパンタナール湿原では、違法伐採や森林火災による「サバンナ化」が進んでいるのだという。

 記者が目にした砂嵐は、観測史上初めてとのこと。中西部を襲った深刻な干ばつにより、砂漠と化した農地などから発生したのだ。専門家は、森林破壊が続けば、こうした異常気象は日常的に発生すると警告している。世紀末の様相を呈した街を眺めながら、地球の未来を案じた出来事だった。(S)