日本人アナが一躍有名人にー台湾から


地球だより

 東京五輪が盛り上がっている。台湾は今回、史上初めて二桁のメダルを獲得したこともあり、毎晩テレビにかじり付いている人も多い。
 ところで、今回の東京五輪で一躍有名になった日本人がいる。NHKの和久田麻由子アナウンサーだ。

 台湾は1979年以来、オリンピックを含む国際大会には「チャイニーズ・タイペイ」の名前でしか参加することができなかった。中国が「台湾」の名前で出場することを許さなかったからである。台湾の人々は、自国の名前さえ名乗れないことに憤り、やるせない気持ちを抱えていたのだ。

 そんな状況に諦めさえ持っていた人々は、開会式の入場を実況した和久田アナの「台湾です」という発言が報じられると熱狂した。これまで国際大会の開催国は、無難に大会を進めるため中国の機嫌を損なわないことにばかり終始してきた。もちろんメディアも例外ではない。

 だからこそ、台湾の人々は、和久田アナの実況に熱狂した。「台湾です」をめぐってテレビのトーク番組では議論が交わされ、SNS上では和久田アナの名前があふれた。今や台湾でもっとも有名な日本人と言っていいだろう。

 何よりも台湾の人々が喜んだのは、日本のテレビが、チャイニーズ・タイペイという虚構の名ではなく、台湾が実在するという現実を直視した実況をしてくれたことにある。「台湾です」のただ一言が、台湾の人々の日本に対する好感度をより高める結果になったのである。

(H)