女性政策で失敗続く共和党
未婚女性の支持が急落
中絶への対応で再考必要
【ワシントン】愚かとまでは言わないが、共和党が女性の問題に関して、これほどまで不器用になったのはどうしてだろう。抜け目なく、雄弁で、人を引き付ける力があり、大衆受けのするマイク・ハッカビー氏ですら失敗しているのだから、どこかに問題があることは明らかだ。共和党は、勝てるはずだったミズーリ、インディアナ両州で上院の議席を失った。そこから学ぶべきだ。
ハッカビー氏自身がそれほど大きなミスをしたわけではないが、勘違いしているようだ。オバマケアが無料の避妊薬を義務付けているのは、女性が自身の性的衝動から自分自身を保護するには連邦政府の助けが必要だと民主党が考えているからだと、どういう訳か考え始めている。
勘違いも甚だしい。そんなことを言った民主党員は知らないし、どんなリベラル派でもそんなことは考えもしないはずだ。保守派からそのような理論が出てくるとすれば、それは、残念なことだが、自身の中から出てきたとしか思えない。
いずれにしても、まず、なぜ女性の性的心理に入っていく必要があるのか。ばかげている。これは政治だ。政策に集中すべきだ。信教の自由の侵害の問題は取りあえず置いておくとして、避妊薬の義務付けに政策面から疑義を呈していけばいいはずだ。優先順位の問題だ。州が、病気の子供に抗生剤が必要な女性への補助金を拒否しておいて、わずかな負担で避妊薬を女性に提供することのどこに道徳的正当性があるというのか。
これらの女性に関する問題に対処するには、政策に集中し、素人心理学をやめることだ。中絶問題を取ってみよう。「女性との戦争」と言われているもののほぼ9割はこの問題であり、残忍な保守派の男性は、女性のリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)を女性が管理することを否定していると非難されている。
非難は効果を上げている。中絶問題に関して米国は賛否分かれているが、共和党のこの問題への対応ががさつなことが、大きなマイナス要因になっている。未婚女性の共和党への支持は2012年に36ポイント下がった。
だが、考えの違いを乗り越え、広範な支持を得、中絶問題で優位に立つ簡単で、確実な方法がある。後期中絶の恐ろしさを重点的に訴え、禁止させるのだ。
中絶医カーミット・ゴスネル氏の昨年の裁判は大きな反響を呼んだ。米国中が、ベビー殺しの仕事ぶりを見せられ、同じような印象を持った。そして、中絶権支持者らはゴスネル氏から離れていった。だがこの問題から離れることはできない。
リベラル派の故ダニエル・パトリック・モイニハン上院議員が的確に表現したように、これは幼児殺害だ。後期中絶の一つである部分出産中絶に関してモイニハン氏は、「かつて、このやり方は幼児殺しにかなり近いと言った。今はこう言われている。幼児殺しにかなり近いどころか、幼児殺しそのものだ」と言った。出産中に子供の頭が産道を通る前に、その頭蓋骨をつぶすのだから、これ以上の的確な説明はない。
早期中絶に関しては、このような見方はされていないことを保守派は受け入れるべきだ。後期中絶には間違いなく2人の人間が関係するが、受精後6週間の胎芽に関してはこのような考え方は普通しない。
このような早い段階で胎児が人といえるか、少し宗教的に言えば霊魂が宿っているかという点に関しては大きな意見の相違が依然としてある。信仰に関わる問題であり、意見に相違があるのは仕方ないだろう。
中絶反対派は諦めるべきだといっているわけではない。現在、少数の支持しか得られていない法的強制力に頼むよりも、早期中絶に関してよく説明し、今後、多数派を形成していけばいい。制約はあるが、それが民主主義というものだ。
妊娠第3期(7~9カ月)と第2期(4~6カ月)後期に関してはそうはいかない。殺さなければ、自力で生きる可能性のある子供に関する話だからだ。母親の命を救う目的以外のいかなる理由でも、その命を奪うことはあってはならないことだ。各州、全米でそれを違法とすることは、共和党の中絶に関する主張の核心であるべきだ。
これに似た政策に基づく政治的戦略が、テキサス州知事選で試される。民主党候補のウェンディー・デービス氏は、複雑な経歴の持ち主だ。だが、それについては書かない。正義感が強いのは分かる。だが、個人の子育ての問題にまで立ち入るのは、本筋から外れているからだ。政策、特にデービス氏を全米の舞台に押し上げる問題について書きたい。
デービス氏は、土壇場で議事妨害を行った。妊娠20週間以降の中絶を非合法とすることを中心とする州法案の表決を妨害するためだ。それを選挙の争点にしたいのなら、させればいい。なぜ、後期中絶を支持するだけでなく、そのような信念を持つようになったのかデービス氏に説明させておけばいい。
性差をめぐる政治闘争の地雷原に近づく必要はない。違う土俵で戦えばいい。デービス氏らが敗北するのを待てばいい。