中国ワクチン不要とは言えない現実ーブラジルから
地球だより
最近、街で出会う人に「新型コロナウイルスのワクチンを受けるつもりは」と質問することが記者の日課となっている。もちろん、ブラジルは感染拡大「第2波」の只中(ただなか)であり、質問をする相手は限られる。医療崩壊に直面している地方自治体も多く、医療関係者の緊張感と危機感は想像以上のものだ。
興味深いのが、サンパウロ州が独自に契約した中国バイオ企業シノバク社のワクチンに対する回答だ。同社のワクチンは、ボルソナロ大統領が「中国のモルモットになるつもりはない」「新型コロナを世界に広めたのは中国だ」などと拒絶していることもあり、世論調査では半数近くが同社製ワクチンに拒否反応を示している。
実際のところ、「欧米のワクチンなら受けたいけど、中国製は…」と言葉を濁す人も少なくない。ただ、「高齢者や基礎疾患のある人なら受けるべきだ」「政府が安全だと保証するのであれば大丈夫だろう」と答える人も多く、医療関係者からも「重症化の恐れが高い人は製造元に限らず接種した方が良い」との回答もあった。
ブラジルでは、すでに新型コロナ感染が原因で20万人を超える人々が亡くなっており、記者の知人家族でも数人が帰らぬ人となった。入院生活を送った人や後遺症で苦しむ人の話も聞いており、新型コロナの恐ろしさは嫌というほど見てきた。
現在、中国とロシアが「ワクチン外交」で世界で存在感を強めているという。目の前で多くの人が亡くなっている中で、「欧米のワクチン以外は必要ない」などとは言っていられない現実もある。
(S)