押し寄せる“旅客”
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
20年ほど前をみても、世界の有名観光地は日本人たちでいっぱいだった。ピラミッドがあるエジプトのギザはもちろん、世界のどこにいっても日本人がウヨウヨしていたが、近ごろは中国人に取って代わられた。地球村全体が中国人観光客(以下、“旅客=中国語で旅行客を意味する”)だらけだ。
わが国も同様で、ヨン様とチェ・ジウの余韻を感じたい日本人観光客で埋まっていた南怡島(ナミソム)も“旅客”に席を譲った。一日中満ち潮のような人波で埋まる明洞(ミョンドン)と東大門(トンデムン)のショッピング客も“旅客”一色だ。
昨年入国した外国人1220万人のうち392万人が中国人で、全体の36・7%。不動の1位だった日本人271万人を追い抜いた。隔世の感がある。
韓日ワールドカップ(W杯)が開かれた2002年だけをみても、“旅客”特需はジレンマを生んだ。史上初めてW杯に出場した自国チームを応援しようとする中国版「赤い悪魔(韓国代表チームのサポーター)」の“球迷”と不法滞在者を識別するという難題に直面したのだ。ヒヨコの雌雄を鑑別するのと同じくらい難しい問題だった。政府はビザ発給条件を厳しくし、パスポートの所持者名と一致するW杯入場券と10万元、または2万㌦以上の銀行残高証明を要求した。100平方㍍以上の住宅所有証明や2000cc以上の自動車所有証明も必要だった。たいそう不快に思ったことだろう。
当時、ビザ発給の実務者は“旅客”が提出した書類を調べて唖然(あぜん)とした。銀行残高10億ウォン以上はざらで、100億ウォン台の入金がある通帳もしばしば目についた。10億人を超える中国人の10%はわが国の上流層よりはるかに金持ちだという事実を遅まきながら悟らされた。
中国最大の祝日・春節(旧正月)の連休(1月31日~2月6日)を控えて観光業界は“旅客”を迎える準備に拍車を掛けている。韓国観光公社は“旅客”に韓国の大学生が同行してソウル、京畿、江原など四つの観光地を巡る“友よ遊ぼう”行事も企画した。“旅客”は金の使い方が豪快で、日本人の2倍だ。
ところが「“旅客”を冷遇する」という不満が噴出している。「韓国で“旅客”が歓迎されるのは単にお金のためだけのようだ」という冷めた呟(つぶや)きまで聞こえてくる。これではダメだ。“旅客”はお客様だ。民間外交は決して遠いところにあるのではない。
(1月17日付)