様変わりのラマダン


地球だより

 4月24日から始まったイスラム教徒のラマダン(断食月)はかつてないものとなった。

 まず、イスラム教徒にとって何よりも大切なモスク(礼拝所)での集団礼拝がなくなり、各自が自宅などで祈りを捧(ささ)げることを余儀なくされている。新型コロナウイルス感染拡大を防止するためだ。日の出からの1日の断食を終え、日没後に貧しい人々が大勢集まって、野外でテーブルを囲み無料の食事(イフタール)をすることも、今年は禁止された。

 親戚や友人らが、豪華な食事を取るために街に繰り出し、夜中まで、あるいは明け方まで歓談することもできない。レストランやカフェでは、水たばこやビュッフェ形式の食事の提供も禁止され、客に社会的距離を取ることが求められている店もある。

 しかし、いずこにも、そのような規制に反発し、無視する人々はいるもので、自宅のすぐ近くのアパートの最上階には金曜日、大勢の人々が集まり、集団礼拝をしている。モスク閉鎖に反発する人々が、有力者を立てて企画しているものと思われる。

 その信仰の篤(あつ)さには驚くが、これでは、政府が感染防止のためにモスクでの礼拝を禁止した意味がない。

 若者の一部は、近所迷惑お構いなしにオートバイのエンジン音をとどろかせて規制に抵抗している。感染防止のため、わが家の窓は一日中オープンにしてあるので、近所の様子が手に取るように分かるようになった。ラマダン後の感染急拡大が心配だ。

(S)