アッラーはコロナより強し


地球だより

 2月下旬までの約1カ月の一時帰国後、カイロに戻り、久しぶりにある病院に行くと、体格の良い中年男性が、私の顔を見るや、エレベーターからそそくさと降りようとした。新型コロナウイルス感染拡大の中、マスクをしていた私を中国人と勘違いして、逃げようとしたのだ。大柄のエジプト人が、小柄な私から逃れようとする様が、こっけいに見えたのか、周囲の人々の何人かは、笑いをこらえて見詰めていた。

 ある友人は、私が日本に帰国していたことを知り、「大丈夫か」と助手に確認してきたという。いつも世話になっている電気屋も同様で、感染拡大に神経質になっている。

 ホームレス風の中年男性は、私が日本から来たことを知ると、鬼のような形相で「コロナ、コロナ」と叫びだす始末。

 エジプトでは、死者が80人を超え、感染者は1300人に達した。拡大はまだ続きそうだ。

 地中海沿岸の都市アレクサンドリアでは3月下旬、200~300人が集まり、「コロナ反対デモ」が行われた。放映されたビデオを見ると、「アッラー、アクバル(神は偉大なり)」と、声をそろえて叫んでいる。エジプト人の友人に聞くと、「アッラーはコロナよりも、医者よりも強いのだから、アッラーに助けていただけば、コロナ問題は解決すると考えている」から「アッラー、アクバル」でいいのだという。

 マスコミは、こういうことをやるのはイスラム過激派の「ムスリム同胞団」か厳格派の「サラフィスト」だと冷たく突き放した。

(S)