喫煙者の悲哀
2015年1月は喫煙者にとって“悪夢の月”だ。タバコの値段が1箱2500ウォンから4500ウォンに上がった。当時の保健福祉部長官(閣僚)は、このように語った。「国民の健康のための決断」であると。「タバコ税を上げると税金の逆進性が発生する」との高尚な反論は馬の耳に念仏だった。値段を上げてまで国民の健康を守ると言うのだから、どんな論理が通じるだろうか。
国民の健康は良くなったのだろうか。そのようには見えない。喫煙者は大きくは減少しなかった。良くなったのは税収だけだ。翌年、タバコであげた税金は倍にも増えて13兆ウォンに達した。タバコにはありとあらゆる“雑税”が付け加わる。タバコ消費税の他にも地方教育税、個別消費税、付加価値税、健康増進負担金、廃棄物負担金…。喫煙者は代価を返してもらうだろうか。喫煙者のために使うお金は200億ウォン余りだけ。それも禁煙補助金と禁煙広報費として。恩恵一つなく重い税金だけ納める理由について、自嘲混じりの冗談が行き交っている。「喫煙者こそ愛国者」だと。
そんな記憶が蘇ったのは、大型病院で喫煙ブースを見てからだ。コンテナで造られた3坪余りの周りには、案内文が貼られている。「喫煙はブースの中で!」。そこに5、6人が集まってタバコを吸うのだが、皆マスクを外したり、顎に掛けたままだ。ソウル駅前の喫煙ブースはなおさら見ものだ。5~6坪ほどのブースには、1日中20人以上が入って満杯だ。
喫煙者は新型コロナウイルスの高危険群に分類され始めた。米国の疾病予防管理センター(CDC)は「喫煙者が新型コロナに感染すれば、基礎疾患を持つ感染者のように深刻な合併症が発生し得る」としている。喫煙者が深刻な症状を見せる可能性は非喫煙者の1・4倍、重症・死亡に至る確率は2・4倍に高くなるという。中国の研究ではその確率が14倍に跳ね上がる。
わが国の喫煙率は成人男性は31・6%、同女性は3・5%だ。喫煙者は内輪に見積もっても600万人を上回る。彼らは喫煙ブースに向かう。新型コロナの高危険群が群がって集まり、マスクまで外してタバコの煙を吐く場所に。週末ごとに宗教集会を開く教会の方が危険だろうか、喫煙ブースの方が危険だろうか。喫煙ブースに対する政府の指針はなぜないのか。タバコを吸う人は新型コロナに感染しても構わないと考えているわけではないはずだが。
(4月8日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。