サッカーに見る雁行形態
地球だより
日本人の手先が器用とすると、タイやミャンマーなど東南アジアでは、総じて足さばきが優れている。
バンコクの公園を散歩すると、ネットを張って竹製のボールを蹴りあうタックロー(蹴球)の練習試合をあちこちで目にするし、ムエタイ(キックボクシング)熱も高い。だから、タイで野球は国民的スポーツにならないが、サッカーは別だ。小学生あたりから熱が入っていて選手の底辺は広いし、観客の層も厚い。
1956年から始まったアジアのサッカー王者を決めるアジアカップでも当初、タイやミャンマーなどが上位に顔を出していた時代もあった。
ただ、Jリーグが出来たことを契機に、この20年で日本が急成長し立場は逆転した。それでも、産業の雁行(がんこう)形態同様にサッカーでもこの流れが見られる。産業の雁行形態とは、雁が二等辺三角形の形で飛翔するように、日本の技術がまず韓国や台湾、香港に流れ、さらに東南アジアに流れる形態を言う。
Jリーグが、タイのプロリーグ「タイ・プレミアリーグ」を皮切りに東南アジア各国のリーグと提携を結ぶと、現地出身Jリーガーの輩出に尽力するようになった。
一方で、東南アジアの各リーグでプレーする日本人選手も近年、急激な勢いで増えている。特にタイでは顕著で、元日本代表監督の西野朗氏がタイ代表監督になっただけでなく、昨年は60人以上もの日本人がタイリーグでプレーするようになった。その波は、本田圭佑氏が事実上の監督に就任したカンボジアを筆頭に、ラオス、ミャンマーなど周辺国に波及し始めている。
(T)