地下鉄、乗り越すと罰金
地球だより
カイロの地下鉄に乗り降りして、ほのぼのとさせられることが一つある。それは、若い学生や青年たちが、老人や女性に気さくに声を掛け、席を譲る姿だ。遠くにいる人に大声を掛けて知らせることも多い。ためらいや恥ずかしさはなく、実に自然な感覚で行動している姿は、見ていて気持ちがいい。
エジプト人の人懐っこさもいい意味で作用しているのかもしれない。
一方で問題もある。
先日、車両から出ようと出口に向かったところ、どやどやと入ってくる乗客らに押し戻されて外に出られず、一駅乗り越すということがあった。
エジプト人の友人と一緒に地下鉄に乗ると、決まって、降りる駅の一つ手前の駅で立ち上がり、出口付近に移動する。
ドアが開くと双方から乗客がなだれ込み、ぶつかり合うのが常なので、間違いなく降りようと思えば、準備が必要なのだ。日本のように、降りる人が優先で、最後の人が降りるのを見届けて乗り込むという原則は全くない。なるほど、一駅先から準備するのは、来るべき“闘争”への備えだった。間違いなく、降車するための一大手段だったのだ。
実はエジプトでは、一駅乗り越して下車すると、超過料金ではなく、罰金を支払わねばならない。しかもなんと約10倍の支払いを要求される。過失行為ではなく、一つの意図的な犯罪行為と見なされるのだ。そのことも、乗降客がぶつかり合う原因をつくっているようだ。
(S)