時間感覚のいろいろ


地球だより

 米首都ワシントン周辺では、エスカレーターで右側に立ち、左側を空けておくのが暗黙のルールとなっている。左側に立ち、後ろから来る人の行く手を妨げる人は、エスカレーターとレフト(左)を合わせて「エスカレフター」とも揶揄(やゆ)される。

 ワシントン観光を促進する団体がツイッターで発表したCMが話題を呼んだ。あえて「エスカレフターになろう」と呼び掛ける内容だったからだ。

 CMでは、エスカレーターに立っている観光客風の若い男性が、隣の女性と楽しくおしゃべり。その後ろで黒いスーツ姿の男性が苛(いら)立った様子で何やら呟(つぶや)く。続いてその男性を矢印で示し「こういう人にならないでください」と表示する。

 CMの狙いは、人々にもっとゆとりを持ち、生活を楽しむよう促すことだ。しかし、それを見た多くの人はむしろ後ろに立つ男性の方に共感したようで、「ここはディズニーランドではない」などと批判の投稿をした。

 何かと忙しい地域の住人の反感を買ったわけだが、それでも日本人に比べると米国人はそこまでせかせかしていない。日本でよくある駆け込み乗車は、こちらでは見たことがない。駅以外の場でも、比較的ゆったりとしている。店のレジで後ろに並んでいる人がいても平気で客と会話を続けるというのもよくある光景だ。

 だが、たいがいのことに大らかな米国人も、なぜか車の運転に関してはせっかちになる。信号が青に変わってもすぐに発進しなかったりすると、後ろからクラクションを鳴らされてしまう。

 こうした「せっかち度」は状況によって異なるようだ。時間感覚を通しても国民性の一面を知ることができる。

(Y)