満天の星と蛍の乱舞
地球だより
東南アジアのラストフロンティアとされたのは、ベトナムとミャンマーだった。今ではベトナムにもとっくに先を越され、ロヒンギャ問題などで制裁を受け、1周遅れで走っている感のあるミャンマー。ただ、ミャンマーを訪れる観光客にとっては、その未開発ぶりが魅力的だ。
商都ヤンゴンから第2の都市マンダレーまで夜行列車に乗って窓の外を見上げれば、満天の星と、星の数にも負けない蛍の光という饗宴(きょうえん)を楽しむことができる。マンダレーからミッチーナまでの夜行列車では、室内灯が消えてしばらくすると、こつこつと小さくノックするような“当たり”を足に感じたことがある。実は走り出したネズミの頭がぶつかっていた。これも慣れれば、なんてことはなく、心地良いスリルを味わえる。
ツアー客などに人気を博しているのがヤンゴン市をぐるりと回る環状線だ。総距離は46キロで、ちゃんと複線となっている。
停車する駅には大抵、ナタ持ちのスイカ売りがずらりと並んでいる。ナタ持ちはその場でスイカをスパッと切り分け、客は立ったままかぶりつく。炎天下にさらされる南国のスイカは、庶民にとって水代わりでもある。
1日乗降者10万人とされるこのヤンゴン“山手線”は、車両の多くが日本製だ。三陸鉄道や北海道ちほく高原鉄道など日本各地で走っていたローカル列車が引退後、第二の人生を送っている。日本人観光客の中には、これを目当てに来る人もいる。
(T)