クロマグロ、太平洋でも未成魚を禁漁に
モロッコで開かれていた大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の年次総会で、地中海を含む東大西洋での漁獲枠を2020年までの3年間、現在より5割増とすることが決まった。漁獲規制で資源回復が進んだためだ。
資源減少深刻な太平洋
クロマグロは本マグロとも呼ばれ、日本人には人気の高い高級寿司ネタである。日本国内で流通するクロマグロのうち、大西洋産は4割を占める。大西洋クロマグロの漁獲枠のうち、日本は8%を割り当てられている。今回の漁獲枠拡大でわが国も恩恵を受けることになるが、これで流通量が増え、値下がりにつながると、ただ喜んでいていいのか。資源量が回復した大西洋クロマグロに対し、太平洋クロマグロは依然として資源の減少が深刻である。
大西洋クロマグロは、かつて乱獲によって絶滅の危機に瀕していた。そこで30㌔以下の未成魚を原則禁漁とするなど厳しい漁獲規制を実施。これによって資源量は徐々に回復した。未成魚の禁漁によって、産卵が増えたことが資源量回復の鍵であった。漁獲規制、特に未成魚を禁漁にすれば、自然と資源は回復することが証明された。国際的な協調による漁獲規制が資源を回復させた模範と言える。
翻ってクロマグロの主要漁場である太平洋はどうだろうか。太平洋クロマグロの資源量は、1961年に16万㌧だったのが、2014年にはその約10分の1、1万7000㌧にまで激減している。
今年9月、韓国で開かれた中部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で、日本は太平洋クロマグロの資源量の回復に応じて漁獲枠を増減させる新ルールを提案し、修正の上、了承された。24年までに資源量を4・1万㌧にまで増やすという目標を掲げ、目標達成率が60%以下なら漁獲枠を減らし、75%以上なら漁獲枠を拡大するというものだ。
しかし、このルールの下で資源量が回復する確たる見通しはない。日本の主導で決めた30㌔以下の未成魚の漁獲枠の半減も守られなかった。日本は漁期が終了する前に漁獲枠を突破。日本の漁獲規制の甘さを国際社会に示す結果となった。危機感を抱いた水産庁は、来年度から未成魚の漁獲規制に違反した場合、罰金や懲役刑などの罰則の導入を決めた。
だが、資源回復を本気でなそうとするなら、大西洋クロマグロと同じように、未成魚を全面的に禁漁とすべきであろう。今後、成果がでるかどうか確信の持てない方法で試行錯誤するより、大西洋で成果がはっきりと出た全面禁漁に踏み切るべきである。
長期的な視野で施策を
日本は太平洋クロマグロの全漁獲量の8割を消費している。資源問題に対する責任は重い。規制は一時的には、漁業者には不利になるかもしれない。しかし、それによって持続可能でかつ収益性の高い漁業への道が開かれるのである。漁業者は目先の利益を追いがちだ。監督官庁である水産庁は、長期的な視野に立って、水産業、流通、そして漁業者の未来を考え、施策を実施ししてゆく責任がある。