高官が通勤地獄にチャレンジ


地球だより

 マニラ首都圏では高架鉄道の一部区間が送電施設の火災で運転中止となり、交通渋滞がさらに深刻化している。通勤者の危機的状況を訴える市民団体と、それを否定する政府高官の論争は「通勤チャレンジ」へと発展した。

 渋滞問題をめぐり大統領府のパネロ報道官は、「早く目的地に到着したければ、早く出発すればいいだけ」と述べ、まだ危機的状態ではないと主張。これに対し左派系市民団体は、「自家用車を持たない市民の苦難を理解していない」と反論し、公共交通機関を使った「通勤チャレンジ」を提案した。

 パネロ氏は挑戦を快諾し、特別扱いを避けるためボディガードを同伴させないなどの条件ものんで「出勤」に臨むことになった。

 チャレンジ当日、パネロ氏は、首都圏マリキナ市から直線で約14キロほど離れた大統領府に向かうため朝5時に出発。4台のジプニーやバイクタクシーを乗り継ぎ、約4時間かけ少し遅刻して出勤を果たした。

 帰宅時も同じルートなら8時間を往復に費やすことになるが、それでもパネロ氏は「危機的状況ではない」との見解を変えず、交通事情を知るためわざと遠回りしたと弁明した。

 そもそも単なる通勤が「チャレンジ」扱いされること自体が、通勤地獄の惨状を表しているとも言えそうだが、日本の支援で建設される地下鉄の完成で、こんな状況が一刻も早く緩和されることを願いたい。

(F)