自然との関わり学ぶ学校動物飼育が命への責任感を育む
白梅学園大学子ども学部名誉教授の無藤隆氏
かわいいと感じる動物を継続的に世話し、育てることを通して、命の大切さ、世話をする喜び、仲間との交流、子供の成長を育むことを目指す全国学校飼育動物研究会の21回目の大会が東京都文京区の東京大学弥生講堂で行われた。白梅学園大学子ども学部名誉教授の無藤隆氏は「生態学的あり方としての自然における学校動物飼育」と題して、動植物と人間の相互関係、学校動物飼育のあり方について特別講演を行った。
東京大学弥生講堂で「全国学校飼育動物研21回大会」開催
古来、人間は土・水・空気などの環境と相互依存的な関係を結びながら生きてきた。そして、犬や猫の愛玩動物や農耕・荷運びに使われた牛や馬、食用の鶏、豚などと深く関わって生きてきた。准人工の場で、人間の住環境の周りから得る餌を動物に与え、飲み水を与え、育て、使ってきた。准野生の場、草むらには、スズメなどの小型鳥類、花の蜜を集めるハチやチョウ、バッタ、コオロギなどの昆虫、池には水鳥、トンボやカエル、魚、森にはカブトムシなど多種多様な生き物が生息していた。
こうした関わりの中で、命あるものは生まれ、育ち、死んでいくことを感じながら人間は動物と相互依存的な関係を持ち、食用、農耕・運搬用の家畜に対しての畏敬の念を持つようになってきた。人間自身も生まれ、親の愛情を受けながら育ち、家庭を持ち、子供をもうけ、老いていき、亡くなる存在であることを学んできた。
さまざまな動植物を支える土壌になっている土・水・空気は子供にとって、泥遊び、水遊びなどに通じる。海辺や川に出掛けて、砂遊び、水遊びをすると、何がしかの貝や動植物、魚や水性昆虫などに出合える。幼児の砂場での砂遊びは、それらの環境との関わりの入り口になっている。
誰もが、愛着を持つようになるには、餌をやったり、水をやったり、掃除をしたり、日々世話をし、遊んだり、観察したり、飼育のための調べ物をしたり、さまざまな活動をしながら、長期間動物に関わることによって、動物の生老病死を実感し、動物への思いやり、飼育に関わることで、動物が応答的に振る舞い、懐くようになると、子供自体の中に命への責任感が生まれ、一緒に飼育している同級生への思いやりなども芽生え、情緒豊かな心が育まれる。
餌やり、飼育設備の掃除、飼育日誌を付けたり、学校全体で飼育動物と触れ合う機会を企画するなど言葉・文章・絵などで表現することで、国語力や表現力、企画力を育てることにつながる。大人の立場は、具体的個別的な表現、思いを伝え、巧みさに重きを置かないで、その場に感じたことを大切に情緒豊かな子供の成長を見守りたい。
指導要領上は生活科において、動物飼育を行うことが“義務付け”られている。動物を育てることを一過性のものにせず、例えば、家庭などのペットとのつながりを考えたり、社会全体での動物への関わりやその利用・共生の在り方、自然環境の保護・維持について学ぶ機会を持つなど継続的な物の見方を育んでほしいと無藤氏は語った。